JST戦略的創造研究推進事業 さきがけ [複雑流動] 研究課題
磁化プラズマ乱流のマルチスケール・マルチフィデリティモデリング

磁化プラズマ乱流のマルチスケール・マルチフィデリティモデリング

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Purpose

研究目的

磁化プラズマ乱流中のマルチスケール相互作用現象における重要な課題である「核融合原型炉開発に向けた乱流輸送の定量予測」と「マルチスケール相互作用の理解とモデル化」に挑戦する。それぞれの問題に対し、独自に提案する「マルチフィデリティ乱流輸送モデリング」と「射影演算子法に基づく統計データ解析と一般化Langevinモデリング」の二つをキーアプローチとして、解決の糸口を図る。
 

本研究の独創性と実現性

標準的な乱流理論の基軸とされる Kolmogorov のカスケード理論では、スケール不変性を持つ慣性小領域が存在し、小スケールでの相似則が仮定される。一方、マルチスケール乱流では、大スケールのみならず小スケールにも自発的に流れを作り出す不安定性が存在し、相互作用するため、既存の乱流理論を超えたアプローチが必要となる。この問題に対する解決策として、本研究では「マルチフィデリティ乱流輸送モデリング」と「射影演算子法に基づく統計データ解析と一般化 Langevin モデリング」を提案する。マルチスケール乱流中で自発励起される小スケール揺らぎの能動的描像という標準的な乱流理論とは一線を画す着眼点と、その解析を可能とするために新規開発されたデータ解析手法に学術的独創性を有する(図1) 。

図1.本研究提案の概要:マルチスケール乱流における課題を独自解析手法で解決する。


Key approaches

キーアプローチ

マルチフィデリティモデリングによる乱流輸送モデルの刷新

核融合原型炉に向けた研究開発の取り組みとして、局所プラズマパラメータから乱流輸送の定量予測が求められる。従来は近似理論や経験則に依っていた乱流輸送モデル研究と、解析が少数に限られるために設計・パラメータ探索には利用できず物理知見の獲得に留まっていた高精度・大規模数値シミュレーション研究の間の断絶を、マルチフィデリティモデリングによって融合し、乱流輸送モデルを刷新する。

図:従来は近似理論や半経験則、あるいは低コストの計算データを利用した機械学習モデルによる乱流輸送予測に限られていたが、マルチフィデリティモデリングにより少数だが高精度の大規模数値シミュレーションデータを取り入れ、乱流輸送の予測精度を改善する。

射影演算子法に基づく統計データ解析と一般化 Langevin モデル

非平衡統計物理の分野で開発された数理手法である射影演算子法に基づき、マルチスケール相互作用を異なるスケール間の相関問題として捉えなおし、興味変数に対する相関項とノイズ的な無相関項に分離する。これは統計的定常性の下に厳密に成り立つ式であり、定量評価可能である。マルチスケール乱流解析に適用することで、自発的に励起される小スケール揺らぎが、大スケール揺動に及ぼす粘性散逸、位相変調、確率的駆動などの効果をデータから直接評価するとともに、単純な渦粘性モデルを超えたマルチスケールモデリングを実現する。

図:射影演算子法に基づく統計データ解析と一般化 Langevin モデリングにより、渦粘性では表せない小スケール揺らぎによる減衰と駆動を同時に表す画期的なモデルを構築する。


Grant

研究課題情報

本研究課題は、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ [複雑流動]研究領域の一課題として採択されています。

「さきがけ」について

 さきがけは、我が国が直面する重要な課題の克服に向けて、独創的・挑戦的かつ国際的に高水準の発展が見込まれる先駆的な目的基礎研究を推進し、社会・経済の変革をもたらす科学技術イノベーションの源泉となる、新たな科学知識に基づく創造的な革新的技術のシーズ(新技術シーズ)を世界に先駆けて創出することを目的としています。そのために、研究総括が定めた研究領域運営方針の下、研究総括が選んだ若手研究者が、研究領域内および研究領域間で異分野の研究者ネットワークを形成しながら、若手ならではのチャレンジングな個人型研究を推進します。
JSTホームページ・さきがけプログラムの概要より引用

 

[複雑流動]研究領域: 複雑な流動・輸送現象の解明・予測・制御に向けた新しい流体科学

 本研究領域では、近年その発展が目覚ましい、流れの数値シミュレーションのための環境や手法、流れの計測技術、そして、これらにより得られた膨大なデータを解析する応用数学的手法を駆使し、これまで困難であった複雑な流動・輸送現象の抜本的な解明や、より正確な予測および高度な制御法の確立に向けた、新しい流体科学の基盤を構築することを目的とします。
 具体的には、乱流による運動量・熱・物質輸送、燃焼などの化学反応を伴う流れ、環境流体の諸現象、生体内の流れと輸送現象、種々の複雑流体の輸送・移動現象、電磁場を伴う流れにおける輸送現象など、あらゆる流動およびそれによる輸送現象を研究対象とします。これらの現象に対して、伝統的な流体力学の解析手法はもちろん、応用数学解析、データ科学、数値シミュレーション、新しい実験・計測手法などを適用し、それぞれの研究を深化させつつ得られた知見を相互に活用することで、複雑な流動・輸送現象の解明の糸口を見出すとともに、各分野の強みを活かした新しい分野の開拓に貢献します。
 複雑な流動と輸送をキーワードとし、広い意味での流体力学が関わる種々の分野を俯瞰する視点を導入し、若手研究者どうしの積極的な分野横断交流を推進します。
JSTホームページ・複雑流動研究領域の概要より引用